光線過敏症 学校・集団生活での環境づくり
光線過敏症、無汗症、難病を抱えながら、毎日学校へ通っているお子さんがいます。クラスで1人だけ長袖を着る、日なたを避けて歩く、体育の授業を見学する——そんな日常が、どれだけ心細いことか。でも、正しい知識と周りの理解があれば、その子らしい学校生活を守ることができます。今回は、紫外線や体温調節に特別な配慮が必要なお子さんと、学校側がともに動くための「学校生活管理指導表」をご紹介します。

日本学校保健会 学校生活管理指導票 エポカル 株式会社ピーカブー

光線過敏症とは? — わずかな光でも皮膚が反応する
「光線過敏症(こうせんかびんしょう)」とは、日光や蛍光灯などのわずかな光量でも皮膚に異常な反応が起こる疾患の総称です。通常の日焼けとは異なり、健康な人では反応が起きないほど少量の紫外線(または可視光線)でも、赤みや水ぶくれ、強いかゆみが生じます。重症の場合は、窓から差し込む室内の光だけでも発症します。
原因は大きく ①内因性(体質・疾患によるもの)と②外因性(薬剤・化粧品によるもの)に分けられます。お子さんに関わるものの多くは内因性です。
【光線過敏症の主な種類】
- 色素性乾皮症(XP)……紫外線でダメージを受けたDNAを修復できない遺伝性の難病。幼少期から日光過敏・色素斑が現れ、放置すると皮膚がんや神経障害に進行。日本では22,000人に1人と推定。学校での遮光フィルム貼付や遮光服の着用が不可欠。
- 多形日光疹(たけいにっこうしん)……光線過敏症のなかで最も多い。春先や強い日差しを浴びた後、数時間で赤いブツブツや強いかゆみが露出部に出現する。
- 日光蕁麻疹(にっこうじんましん)……日光に当たった直後〜数分以内に、紅斑や膨疹(ミミズ腫れ)が生じる。重篤な場合はアナフィラキシーショックを起こすこともある。
- 種痘様水疱症(HV:ハイドロアバクシニフォルメ)……UVA繰り返し照射により皮膚の免疫機能が低下し、顔や手に水疱・瘢痕が生じる疾患。EBウイルスとの関連が指摘されている。
- 骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)……紫外線ではなく可視光線に反応するのが特徴。日光に当たるとヒリヒリ感や浮腫性紅斑が出現する。乳幼児期に発症することが多く、衣類・手袋での遮光が重要。
- 慢性光線性皮膚炎(CAD)……繰り返す光線への過剰反応により皮膚が慢性的に炎症・苔癬化する。中高年に多いが、小児例もある。
- 光毒性皮膚炎・光アレルギー性皮膚炎……薬剤や植物成分などの外的物質が皮膚に存在するときに、日光を浴びることで起こる。抗菌薬や抗ヒスタミン薬などが原因となることがある。
- ポルフィリン症(先天性・後天性)……血液中のポルフィリン(光増感物質)が増加することで光線に過敏になる代謝疾患の総称。
- 全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う光線過敏……自己免疫疾患のSLEでは、紫外線暴露が症状を悪化させることが知られており、光線過敏が重要な管理課題のひとつ。
- 多形性日光疹の限局型(juvenile spring eruption)……短髪の男児・若年男性の耳に好発。春先の紫外線増加時期に水疱や痂皮を形成するが、約2週間で消退することが多い。
📌 ポイント:光線過敏症と一口に言っても、「紫外線で反応するタイプ」と「可視光線で反応するタイプ」があります。また、ガラス越しの室内でも反応する疾患(XP・SLEなど)と、直射日光のみ注意が必要な疾患があります。お子さんの疾患がどの波長に反応するかを主治医に確認することが、学校側への正確な説明につながります。
無汗症(むかんしょう)— 汗をかけないことが命取りになる
「無汗症」は、高温・多湿の環境でも汗をかくことができない疾患です。汗は体温を下げるための重要なしくみです。それが機能しないと、体に熱がこもり、体温上昇・頭痛・めまい・動悸、さらには意識障害という命にかかわる熱中症を起こすリスクが常にあります。
無汗症には大きく以下の種類があります。
- 先天性無痛無汗症(CIPA)……温度覚・痛覚の消失と無汗を特徴とする遺伝性疾患(指定難病)。痛みを感じないため骨折や口腔内の自傷に気づきにくく、多科連携によるケアが必要。
- 無汗・低汗性外胚葉形成不全症(EDA)……汗腺が先天的に欠損または低形成のため発汗できない。歯や毛髪の異常を伴うことも多い。
- 特発性後天性全身性無汗症(AIGA)……後天的に明らかな原因なく広範囲の発汗が低下する疾患で、2015年に厚生労働省の指定難病(第163番)に指定。日本人の若年男性に多い。ステロイドパルス療法が有効なケースがある。
📌 学校生活の注意点:体育の授業・部活動・遠足・運動会など、発汗・体温上昇が予想されるあらゆる場面で個別の配慮が必要です。「見た目は元気そう」でも体の中では危機が起きていることがあります。エアコンのある涼しい環境への避難ルール、水分補給の声かけ、緊急時の連絡体制を学校と事前に決めておきましょう。
学校へどう伝えるか — 「学校生活管理指導表」という公式ツール
「学校にお願いしたいけど、どうやって伝えればいいの?」というご相談をよく受けます。そこでぜひ活用していただきたいのが、公益財団法人日本学校保健会が作成した 「学校生活管理指導表」です。
この書類は、主治医が必要事項(疾患名、症状、配慮すべき運動・活動の種類と程度など)を記入し、保護者を通じて学校に提出するものです。先生や養護教諭が客観的な医師の判断に基づいてお子さんの状況を把握し、学校全体で共有できるように設計されています。
管理指導表の種類
- アレルギー疾患用(令和元年度改訂版)……気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎・結膜炎などに対応。光線過敏を伴う疾患(SLE、アトピー等)でも活用可。令和4年4月より医療機関での発行に保険適用が認められた。
- 小学生用・中学高校生用(令和2年度改訂版)……心疾患・腎疾患・糖尿病など内科的疾患や、運動制限が必要なあらゆる疾患に対応。
- 幼稚園・保育園用(令和2年度改訂版)……就学前のお子さん向けに対応した様式。
日本学校保健会のウェブサイト(hokenkai.or.jp)からPDF・Excel形式でダウンロードできます。また、学校の養護教諭(保健室の先生)に相談すると学校から書式を受け取ることもできます。
管理指導表を活用するステップ
- 主治医に相談する……「学校生活管理指導表を書いてもらいたい」と伝えましょう。記入の際に、お子さんの疾患・症状・避けるべき状況・緊急時の対応を整理して伝えると、より具体的な内容になります。
- 入学・進級前に余裕をもって動く……学校側が環境整備(遮光フィルムの設置、冷房管理など)を行うには時間がかかります。特にXPのような疾患では入園・入学の2〜3年前から行政・学校と相談を始めることが推奨されています。
- 学校(担任・養護教諭・管理職)と面談する……管理指導表を渡すだけでなく、保護者として直接説明する機会を設けましょう。「どういう場面で何が起きるか」「どう対応してほしいか」を具体的に伝えることが大切です。
- 毎年更新する……症状や治療方針が変わることがあります。年度始めに更新した管理指導表を提出することで、担任が替わっても情報が引き継がれます。
「1人だけ違うこと」を当たり前にするために
長袖を着ていること、日なたを走れないこと、休み時間に教室にいること。周りと違う行動には、必ず理由があります。
学校が「その子の事情」を知っているかどうかで、お子さんが過ごす毎日の安心感はまったく変わります。管理指導表は、保護者と医師と学校をつなぐ、大切な「橋渡し」の書類です。
エポカルは、光線過敏症・無汗症・難病を抱えるお子さんが、その子らしく学校に通えることを願い、高機能UVカットウェアを作り続けています。「紫外線から肌を守りながら、できるだけ普通の学校生活を——」。その思いを、ぜひ周りの大人みんなで共有してください。

エポカル スクールシリーズ 紫外線対策ウェア UVカット帽子 UVカットスイムウエア カタログ

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【参考文献・情報源】
- 公益財団法人 日本学校保健会「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)令和元年度改訂版」https://www.hokenkai.or.jp/publication/guidance.html
- 公益財団法人 日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(令和元年度版)」
- 難病情報センター「特発性後天性全身性無汗症(指定難病163)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/4391
- 小児慢性特定疾病情報センター「特発性後天性全身性無汗症」https://www.shouman.jp/disease/html/detail/14_14.html
- 国立成育医療研究センター「先天性無痛無汗症(CIPA)」https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/028.html
- 小児慢性特定疾病情報センター「色素性乾皮症(XP)」https://www.shouman.jp/disease/details/14_05_010/
- 妹尾皮膚科クリニック「光線過敏症とは」http://www.senoopc.jp/disease/photosensitibity.html
- MSD マニュアル プロフェッショナル版「光線過敏症」https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-皮膚疾患/日光に対する反応/光線過敏症
- 厚生労働科学研究費補助金「発汗異常を伴う稀少難治療性疾患の治療指針作成、疫学調査の研究」https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/156965
- 「特発性後天性全身性無汗症診療ガイドライン」作成委員会:自律神経. 2015;52(4):352-9.
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針(第2版)」
- 中里良彦(埼玉医科大学)「特発性後天性全身性無汗症」Web医事新報, 日本医事新報社, 2016.
- 厚生労働省「指定難病(163)特発性後天性全身性無汗症の概要」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000085405.pdf
- 色素性乾皮症の学校生活における遮光対策(厚生労働科学研究費補助金 研究報告書, 2016)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162051/201610016A0005.pdf
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株式会社ピーカブー/代表取締役 エポカルプロデューサー/松成紀公子(まつなりきくこ)




